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 台湾は新型コロナウイルスの抑え込みに成功し、4月以降、今月22日に新規感染者が確認されるまで、250日以上、域内感染者がゼロでした。台湾版「Go To トラベル」などの消費喚起策もあり、今年の経済成長率もプラスを維持しそうです。コロナ対策で蔡英文(ツァイインウェン)政権に助言してきた専門家チームのトップ、張上淳・台湾大副学長に防疫成功の背景を聞きました。

張上淳
1956年生まれ。台湾の感染症学の大家で、コロナ対策の専門家グループを率いる。現在も疾病管制署(CDC)幹部とともに記者会見に出席し、感染状況や防疫について説明している。台湾でSARSが流行した際、医療現場で治療・防疫に当たったほか、エイズウイルス感染防止を検討する行政組織にも所属した。

 ――台湾が新型コロナウイルスの流行を早期に抑え込めた主な理由は何ですか。

 ウイルスを域内に入れない徹底した水際対策だ。台湾当局は昨年12月31日、中国のネット上の情報をもとに詳細がわからない肺炎が流行していることをつかんだ。警戒が必要だと判断し、すぐに武漢からの直行便の旅客に対する検疫を強化した。その後も流行状況を観測しつつ、湖南省や感染者が多い他の地区、最終的に中国全土からの旅客に対象を拡大した。入境禁止地域の範囲や時期は専門家チームが決め、行政側も採用した。

 ――専門家チームができた経緯と当初の動きを教えてください。

 私は1月2日に疾病管制署(CDC)の署長から電話を受け、専門家チームの結成を頼まれた。ウイルスの種類は当時まだわかっておらず、感染症などの専門家6、7人を集めて5日に最初の会議を開いた。当時集められた情報から、人から人に感染する可能性があると考え、多数の検査施設が必要になると判断した。中国政府の同意を得て、12日に情報収集のため現地にCDC職員も派遣した。この職員によると、中国の当局者は表向き、「人から人への感染はない」と話したものの、別ルートで中国側から「限定的な人同士の感染はある」と聞いていた。

 ――台湾で最初の感染者が確認されたのは1月21日です。域内での感染発覚前に動き始めたのはなぜですか。

 2003年に台湾で死者を出した重症急性呼吸器症候群(SARS)の経験が影響している。当時、行政はまったく危機対応の準備ができていなかった。その反省を生かして法整備をし、危機の際に強い権限を持つ行政の対策本部を作るようにした。専門家の提言も取り入れる体制をつくり、CDCも設立した。台湾は中国との行き来が非常に多く、SARSのほか、09年の鳥インフルエンザ(H7N9)も中国から持ち込まれた。このため、中国での病気の流行には普段から大きな警戒感を抱いてきた。

 ――専門家チームの提言を行政側はどう扱ったのですか。