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2008年6月5日 星期四

グローバル企業に「日本発」生かす

グローバル企業に「日本発」生かす

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樋口泰行 ひぐち・やすゆき
マイクロソフト日本法人社長
 1957年兵庫県生まれ。大阪大卒、松下電器産業入社。ハーバード大MBA(経営学修士)。アップルを 経てコンパックコンピュータ。合併後の日本ヒューレット・パッカードで2003年社長。05年ダイエー社長。07年3月マイクロソフトCOO(最高執行責 任者)、08年4月から現職。

 パソコンユーザーの多くは、ウィンドウズの基本ソフト(OS)をはじめ、インターネット閲覧ソフトや業務用ソフト「オフィス」など、マイクロソフト製品を毎日のように使っているはずだ。日本法人社長就任から2か月を経た樋口社長に、抱負と課題を聞いた。

品質向上を日本市場から

――社長就任以来、多くの企業を訪問されています。

樋口 訪問したお客様やパートナー企業は350社を超え、マイクロソフトへの期待の大 きさ、責任の重さをあらためて感じています。技術者としてハードウエア中心ですが一部プログラミングも手がけ、日本の伝統的な会社と外資系企業での勤務、 直近ではユーザーの立場に加え、合併後の統合や再生の仕事と幅広い経験をしてきました。今回、原点に戻る仕事に就いたのを機に、パソコンソフトの品質向上 に貢献したいと思っています。

――最優先課題は何ですか?

樋口 マイクロソフトはパソコンからスタートした会社ですが、今はバンキングシステム のような重大な業務も担っています。それに伴い、体制もサポートも充実させていますが、確かな信頼を得るには、何かトラブルが起きた時に電話1本で頼りに なる人がいるか、技術者の顔が見えてくるか、人の要素が大きなウエイトを占めます。社員一人一人が一流の人材になっていく必要があるでしょう。まだまだ進 化していかねばならないと思っています。

――日本法人社長で、米国本社副社長を兼務されます。

樋口 米国本社副社長は肩書きで、あくまで日本の経営が仕事です。ただ、日本は世界で いちばんパソコンソフトの信頼性への要求が高い市場です。日本の品質に対するレベルの高さを本社に伝え、日本市場でも受け入れられる品質レベルを確保する ことが、ひいては全世界での品質向上につながります。就任以来、米国本社に対して強く品質の重要さを訴えてきました。スコアカードという、幹部を評価する 項目に「品質」が初めて入りました。今ごろ初めてというのも恥ずかしいのですが、ようやく製品の品質向上への意識も変わってきました。

 また、日本で、チーフ・クオリティ・オフィサー(CQO)という品質責任者を置いたところ、韓国でもCQOを置こうという動きになってきました。日本発の品質向上の取り組みが注目を集めています。 

――コンパック時代に、米国本社に乗り込んで日本用パソコン製造を認めさせた武勇伝もあります。日本の開発力強化など独自色を強める考えは?

樋口 ハードウエアと異なり、ソフトウエアの研究開発は固定費がしめる割合が高く、各 国向け仕様を作るローカリゼーションはなかなか難しいのが実情です。ただ、日本の消費者向けの電子技術は、特にハードウエア面で進んでいます。日本を開発 拠点の一つと位置づけ、パートナー企業とアライアンス(提携)を組んでいきたい。パソコンのキーボードは世界標準ですが、日本では携帯電話のキーボードを 若い世代が見事に使いこなしています。例えばですが、これからのモバイル用OSやパソコンとの連携など、アメリカでは見えにくい面を、日本発で情報発信し ていけるのではないかと思っています。


オンラインサービス強化に新組織 写真の拡大

「働きがいのある会社ナンバーワンに選ばれたこともありますが、個人個人の働きがいはあると思うんですけれど、もう少し会社全体の連帯感を高めていかないといけないな、というのが課題です」(撮影・谷口とものり)
――ソフトウエアはウエブにシフトする流れがあり、グーグルという強敵がいます。今後の展開をどう見ますか?

樋口 ネットワーク経由でソフトウエアを提供して月額課金的に対価をいただく、というビジネスモデルは、どれだけ早く、どれだけ広がるかはわかりませんが、そういう方向性だと思います。ネットワークは今後、帯域幅が広くなるし、安くなるし、信頼性も高くなりますから。

 でも全部そうなるかというと、決してそんなことはないでしょう。人事や会計など専用ソフトやデータを外部に出しにくいものがあり、ネットワークにつながっていない作業も発生します。そのときは、ソフトがパソコンの中に入っている必要があります。

 マイクロソフトは「ソフトウエア+サービス」として、ソフトウエアと回線を通じたサービスが継ぎ目なくつながっていく形を想定してソフトウエアを開発しようとしています。

 何か新しいキーワードが流行ったときに、そのモデルに一気に全部シフトする風潮がありますが、よく考えたらそうでもないな、ということがあります。「ソフトウエア+サービス」の世界も、ウエブと共存して発展していくんじゃないかと思います。

――ウエブ強化のための新たな動きは?

樋口 パソコンはもちろん、ポータル(玄関)サイトの「MSN」や、携帯端末用OSで ある「ウィンドウズモバイル」なども含めたインターネットという世界の中で、一般消費者向けの存在感を高めていこうとしています。そのための新しい組織 「コンシューマー・オンライン・インターナショナル(COI)」が7月に立ち上がります。

 米国本社で全体をとりまとめるのが、前社長のダレン・ヒューストンです。日本の場合は、いろいろなディバイス(コンピューターの周辺装置)のメーカーがあるので、ほかの国とは違った部隊を持ち、きっちりカバーしていきます。

――7月にビル・ゲイツ会長がパートタイムに退きます。マイクロソフトの「顔」が見えにくくなるのでは。

樋口 松下電器産業でもホンダでも、創業からあれだけ大企業になる過程においては、 リーダーが進化していると思うんです。単にベンチャー的なところから始まって、大企業までにする間にリーダー自身のスタイルが変化し、変化できないと会社 は経営者の器以上には大きくなっていかない。

 会長のゲイツがソフトウエアに重きを置き、スティーブ・バルマーが経営を分担したことで、マイクロソフトは大きくなってきたのです。ゲイツ会長も 急にいなくなってしまうインパクトの大きさを十二分にわかっており、かなり前から、ソフトウエアに対する自分の考えを伝授していますし、今後もパートタイ ムながら、大所高所からソフトウエアのあり方とか、ソフトウエアの考え方の大きな軌道についてはきっちり見ていくはずです。かなり理想に近い形ではないで しょうか。とはいえ、マイクロソフトの「アイコン」であるビル・ゲイツがパートタイムということになると、それなりのインパクトはあると思います。

――日本では、ご自身が「顔」になる?

樋口 私はビジネスの顔なので、日本のIT技術者があこがれるような、もっとエンジニア魂を伝える顔が日本に欲しいと思います。

――ご自身も根は技術者ですが。

樋口 もともと私は、大学のときには手作りでパソコン作ったりして、ほっておくと自然にオタクになってしまうんです。そういう自分が嫌で、木を見て森を見ずにならないようにと自制してきました。だから、一人一人のエンジニアの気持ちまでわかる、と自負しています。

 マイクロソフトはもっともっと強い会社にならないといけない。自然と売れていた時代もありましたが、今は、きっちりお客様の気持ちをつかんで、我 々の商品をきちんと説明して、商売させていただく基本路線を強化していかなくてはいけない局面にあります。その改革を社員が納得する方向で推進したいと 思っています。

――社目の社長業です。やりがいを感じるのはどんなときですか?

樋口 皆で一緒に力を合わせてうまくいったとき。売り上げを達成して、「うまく行った」とみんなで喜びあいたいですねえ。

(YOMIURI PC編集長 稲沢裕子)


CQO 牧野益巳からのメッセージ

お客様視点に立ち、日本的な細やかさを取り入れた品質向上に取り組みます。


チーフクオリティオフィサー(CQO) 牧野益巳

チーフクオリティオフィサー(CQO)
牧野益巳


新設された CQO の役割について
製 品ライフサイクルのさまざまなステージにおいて、お客様が直面する製品品質の問題や要求を理解し、米国本社および国内外・社内外の関連部門と緊密な連携を 行いながら製品品質の向上プロジェクトをドライブする責任者です。品質とは 1 人で向上させられるものではなく、全員でつくりあげていくものだという考えに基づき、私は CQO 就任後、各部門のメンバー約 100 人とミーティングを行いました。その結果、誰もが品質を良くしたいという思いを持ち、何らかの形で品質改善の取り組みに関わっていることがわかりました。 私は、このことを非常に心強く感じ、彼らの思いを汲み取って課題を「見える化」し、地道に対応策を講じていけば、必ず一層の品質向上を実現できると確信し ました。

 

製品品質を向上するための取り組みについて
最 も大切なことは、お客様視点で考えることです。マイクロソフトには、お客様視点を実践するために、お客様のご意見を 14 のカテゴリーでお伺いし、それを分析して製品やサービス、サポート、営業、情報提供などの改善に役立てる Global Relationship Study(GRS) という全社的な取り組みがあります。これに加えて、国内のお客様の声や課題を経営層に報告し、日本独自で対応を決める活動も実施しています。他にも製品開 発段階で第三者機関のレビューや開発段階のベータテストを実施するなど、さまざまな取り組みを行っています。

よい製品、よいサービスをお届けするために必要なことは基本動作を再確認すること、改善に対する経営層の強いコミットメントがあること、現場と中間層の理 解を得て全社で取り組むことが大切だと考えています。そして最終的には、グローバルカンパニーのスケール メリットと日本法人の細やかな対応をうまく活かした品質向上の取り組みを実現することが理想です。


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